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職場のメンタルヘルス対策はできていますか?
ワーク・ライフ・バランスが重要視され、働き方が変わってきている昨今、誰もが健康的に働ける労働環境が求められています。
企業の労働環境を改善する上で、従業員のメンタルヘルスケアを疎かにはできません。
従業員のメンタルヘルス不調は、職場に悪影響を及ぼす原因の一つと考えられています。
従業員のメンタルヘルスは、業務の効率化や生産性の向上をはじめ採用活動にいたる企業運営に大きな影響を及ぼします。
経営者や総務人事部門の担当者は、職場のメンタルヘルス対策について、いよいよ本気で取り組む必要があります。
近年、過重労働や職場の人間関係によるストレスが原因で精神疾患を発症する人が増え、社会問題になっているのはご承知だと思いますが、では、従業員のメンタルヘルス不調によって、どのような経営リスクがあるのかご存知でしょうか。
従業員の仕事に対するモチベーションの低下
メンタルヘルス不調になると、まず従業員の仕事に対するモチベーションが低下してしまいます。そもそも「心=脳」であり、メンタルヘルスが不調になるということは脳の機能低下を意味します。
メンタルヘルス不調に伴い脳機能が低下すると「イライラする」「人と関わりたくない」「ものごとへの関心が薄れる」といった症状があらわれます。意欲の低下が続くと、遅刻や欠勤が増えて勤怠にも影響が出ることがあります。
企業イメージ低下に繋がるミス・トラブルの発生
従業員のメンタルヘルス不調を放置していると、取り返しのつかないミスやトラブルにつながるリスクも高まります。
メンタルヘルス不調は仕事へのモチベーション低下だけでなく、注意力の低下や決断力の低下、倦怠感や睡眠障害などの身体障害も引き起こすため、業務の正確性や安定性に悪影響を及ぼします。メンタルヘルス不調の従業員が業務で事故を起こして人的被害を与えたり、取引先に大きな損害を与えてしまったりすれば、最終的な責任は企業が負うことになります。
従業員の生産性や創造性の低下
メンタルヘルス不調になる従業員が増えると、その職場の生産性や創造性は低下してしまいます。気分の落ち込みや抑うつ状態が続くと、脳の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)の分泌が低下し、集中力や記憶力の低下を招きます。
仕事を効率的にこなすことが難しくなり、パフォーマンスの低下、仕事へのモチベーションの低下はいうまでもなく、新しいことに挑戦する意欲や好奇心も低下するため、創造性やイノベーションを生み出すことも困難になります。
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労働者のメンタルヘルスが企業経営に直結する?
仕事が原因でメンタルヘルス不調になった結果、精神疾患を発症し、精神障害の労災認定を受けた件数が年々増えています。
企業の戦略の土台となるのは労働者です。さらにいえば、その土台は、肉体的・精神的な「健康」。つまり、従業員のメンタルヘルスは、企業経営に直結しているのです(人的資本経営)。
厚生労働省が2021年に公表した「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、メンタルヘルス対策に取り組む事業所の割合は全体で61.4%でした。事業所規模100人以上の事業所では96%以上が何らかのメンタルヘルス対策に取り組んでいるのに対し、100人未満の事業所では5〜8割程度にとどまっています。
29人以下の事業所は53.5%と、約半分がメンタルヘルス対策に取り組めていないのが実情です。
〔出典:令和2年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況(PDF資料より) 厚生労働省〕
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強いストレスを感じているのは労働者の半分以上?
小規模事業所のメンタルヘルス対策が遅れている中、労働者は大なり小なりストレスを抱えつつ働いているという現実があります。厚生労働省が2021年に公表した「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、仕事や職業生活で強い不安やストレスを感じることがある労働者は54.2%、そのストレスの一番の原因としては「仕事の質・量」が56.7%を占めています。
小規模事業所こそ、メンタルヘルス不調によるリスクを回避するための対策が急務といえます。〔出典:令和2年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況(PDF資料より) 厚生労働省〕
強いストレスの内容
54.2%の労働者が感じている
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仕事の量・質
56.7%
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仕事の失敗、責任の発生等
35.0%
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対人関係(セクハラ・パワハラ等)
27.0%
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会社の将来性
20.9%
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顧客、取引先等からのクレーム